研究内容

品質管理機構で発現調節

mRNA前駆体の選択的プロセシング制御の中には、中途に終止コドンを持ち品質管理機構(NMD)で速やかに分解されるスプライスバリアントをあえて産生することで遺伝子発現量を調整する選択的スプライシングが存在します。

NMDの必須因子であるUPF1の相同遺伝子smg-2の変異体が致死でない線虫を材料として、mRNAの全長配列を直接RNAシーケンシング解析した結果、8,028個の遺伝子から産生された12,517種類のスプライスバリアントが検出されました。このうち259個の遺伝子から産生される289種類のスプライスバリアントが中途に終止コドンをもち、かつsmg-2変異体で比率が増加していたことから、選択的スプライシングにより発現量が制御される遺伝子群だと推定されました。これらの遺伝子群には、スプライシングを自己制御可能なRNA結合タンパク質に加えて、代謝に関連する遺伝子群が有意に濃縮していました(EMBO J, 2021)。