研究内容

はじめに
ヒトを含む真核生物では、DNAから転写されたRNAがプロセシング(加工)を経て成熟したメッセンジャーRNA(mRNA)となります。この転写後プロセシングの過程で、細胞の種類に応じた選択的な制御を受けることにより、ひとつの遺伝子からでも必要に応じて多様なタンパク質が産生されます。
転写後プロセシングの可視化
黒柳は、mRNAプロセシングの制御機構を生体内で解析するために、複数の蛍光タンパク質を用いてミニ遺伝子を構築し、選択的プロセシングのパターンを1細胞レベルで可視化する蛍光レポーター作製法を開発しました。
品質管理機構で発現調節
mRNA前駆体の選択的プロセシング制御の中には、中途に終止コドンを持ち品質管理機構(NMD)で速やかに分解されるスプライスバリアントをあえて産生することで遺伝子発現量を調整する選択的スプライシングが存在します。
塩基の転写後修飾による制御
選択的スプライシングにより発現量が制御される線虫の代謝関連遺伝子の中で、S-アデノシルメチオニン(SAM)合成酵素遺伝子sams-3とsams-4は、SAM合成酵素活性によるフィードバック制御を受けていました。
拡張型心筋症と転写後制御
拡張型心筋症は、心筋壁が薄く伸展することによって心室の内腔が拡大し、ポンプ機能が障害されて機能不全に陥るものであり、根本的な治療法が確立されていない難病です。近年、拡張型心筋症患者さんやそのご家族の遺伝子解析により、心臓ではたらくさまざまなタンパク質の遺伝子変異が相次いで報告されています。
拡張型心筋症モデルマウス
拡張型心筋症患者のS635A変異を模したノックインマウスは、若齢から心機能の著明な低下や心室腔の拡大を示したのに加えて心房細動や心室頻拍などの不整脈を発症し突然死を起こしたことから、拡張型心筋症とそれに合併する不整脈の表現型を再現する希少な疾患モデルマウスであることが明らかとなりました。
スプライシング暗号とは
このページでは、mRNA前駆体のスプライシングについて概略を説明しています。